郷田マモラ「モリのアサガオ」感想 ネタバレなし

モリのアサガオ 漫画

郷田マモラさんの作品「モリのアサガオ」の感想をまとめたいと思います。この作品はテレビ東京系列でドラマ化もされているそうですが私は未見です。主演は「チビノリダー」をやられていた伊藤淳史さんだそうです。

「モリのアサガオ」ポイント

  • 死刑制度(日本の)がテーマ
  • 登場人物の感情が丁寧に描かれていて感情移入しやすい
  • ほぼ毎回、泣けるポイントがあるほど練りこまれたストーリー(特に死刑囚たちの過去)

あらすじ

新人刑務官の 及川直樹はなにわ拘置所に配属される。 死刑囚舎房に配属された直樹はさまざまな過去を持つ死刑確定囚たちと接する中で様々な葛藤を覚えながらも成長していく。

時を同じくして直樹のかつての同級生でキャッチボールを交わした仲だった渡瀬満が2人を殺害した罪で死刑判決を受け、なにわ拘置所に収監される。刑務官と死刑囚という立場を隔てた2人の心のキャッチボールが始まる。そして直樹の出生の秘密も明らかになっていく。

感想

死刑制度がテーマ

死刑制度という重いテーマを扱うために作品全体の雰囲気も当然のように重いですが、なんというか押しつけがましさを伴うメッセージ性は私には感じられませんでした。「死刑制度反対!」とかそういう強硬で明確な押しつけではなく「死刑制度ってこういう問題もはらんでいるんですよ」と教えられた、という印象です。 ですので主義主張の強い作品に抵抗感のある方でも読めると思います。

以下が主人公の直樹のセリフからの引用です。

かけがえのない命を奪われた
被害者たちのことを考えると
死刑は必要なんやと
ぼくは思う

引用元:「モリのアサガオ」第4巻 145ページ

そして以下が、直樹の上司のセリフからの引用です。

こうして長い時間をかけて
改心した人間を
殺してしまうことが
はたして正しいといえるんかのう?

引用元:「モリのアサガオ」 第5巻 86ページ

このように、直樹をはじめとした周囲の人たちが抱える疑問や葛藤から、死刑制度について考えるきっかけを投げかけられているように私には思えました。

繊細な心理描写

登場人物の心理描写がとても丁寧で、自然にページを読み進めると普通にその人物の感情についていけると感じました。作品によっては何度もページを行ったり来たりしてから「ああ~この人はそう考えてたのか」と合点できるものもあるのですが、そういう面でこの作品は読んでいて疲れません。

私は漫画に関してはただ読む側なだけで、作風についても話せるほどの知識がないのですが、「モリのアサガオ」における郷田マモラさんの画は写実的ではなく書き込みもシンプルで、どちらかというと読者の想像力にゆだねる部分の多い作風だと思います。

だからこそ表情の描き分けが多彩で読んでいる側としては登場人物に感情移入がしやすいのではないかと感じました。
なお舞台が大阪の拘置所ということでセリフの多くは関西弁で書かれていますが、 関西人でない私でもぜんぜん問題なく理解することができるレベルです。

多様な過去を持つ死刑囚たち

確定囚(死刑囚)を収監する拘置所が物語の舞台ということで、多くの死刑囚たちが登場するんですが、これがまた一筋縄ではいかない者たちばかり。刑務官をパシリに使ったり、突然暴れだしたり。何人も人を殺して反省するどころか「絶対反省なんかせえへんからな!」と開き直る人までいます。

主人公の直樹もそうした、どうしようが救いようのないと思われる死刑囚に対し「あんな奴を税金で何年も生かしておくのはおかしい」と憤ったりもします。

しかしだんだん、その死刑囚たちの生い立ちや過去のエピソードが描かれていくわけです。そうすると「そんな壮絶な過去があったのか・・」と直樹の心にも変化が生じていきます。そして読んでいる側も同じく心を揺らされるわけです。

怖い・グロい描写はある?

そうした描写が苦手な人でも大丈夫でしょう。
この作品には死刑囚が何人も登場し、なぜその人物が死刑判決を受けるまでに至ったのかが克明に描かれます。したがってその人物が犯した凄惨な犯罪のシーンも描かれています。ですが、「モリのアサガオ」における郷田マモラさんの画はシンプルで、かつこの作品ではアクション漫画的に細かくコマを使って動作をリアルに描くという表現はさほどなされていないと感じます。

したがって視覚的なショッキングさに限っていえば怖さはやわらげられています。怖い・グロイ描写が苦手な方でも大丈夫かと思います。

しかしもちろん、登場人物に感情移入させられていればいるほど、想像力に働きかけメンタルにズンズンと迫る怖さがそうしたシーンにはあります。

おわりに

ネタバレ記事ではないので詳細には書きませんが、最初から最後まで漫画作品としての様々な山場や主人公の成長などが盛り込まれているものの、やはり作品全体に漂うのは、やるせなさ、無力感や虚無感といった空気です。

しかし、だからといって救いのない話かというと決してそうではなく、読了後には何か心に温かなものが残る、そんな作品でした。

最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。

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