西村ミツル×梶川卓郎「信長のシェフ」- 感想 ネタバレなし

信長のシェフ 漫画

今回の記事では漫画「信長のシェフ」の感想をネタバレなしでまとめたいと思います。この作品はまだ芳文社『週刊漫画TIMES』で連載中の作品で、コミックスはこの記事を書いている時点で25巻までリリースされています。

25巻まで読んだうえでの感想になりますがネタバレはありません。

あらすじ

現代に生きる料理人のケン。見に覚えのない場所で意識を失っていたケンが身を覚ますと、そこは戦国時代の京であった。敵国の間者だと誤解され危うく殺されかけるケンだったが、機転によって窮地を脱し鍛冶屋志望の娘、夏と出会い彼女の家に身を寄せる。

ケンは自分自身にかかわる記憶のすべてを失っていたが、現代人として身につけていた歴史を始めとした教養・知識、そして卓越した料理人としての技能は失われていなかった。
ケンの料理はたちまち京の人々を虜にし、その噂は遠く離れた国々へも届くようになった。
そしてある日、後に戦国の覇者と呼ばれる風雲児、織田信長がケンの前に現れる。
激動の戦国時代を料理人として生き抜くケンの物語。

みどころ

タイムスリップ&記憶を失くした主人公

「信長のシェフ」の主人公のケンの設定は、「自分のことは忘れてるけど他のことは覚えている」となかなか大胆なものです。

ケンは物語の序盤で自分が現代からタイムスリップして戦国時代にやってきたということを認識します。加えて歴史など教養に関する記憶も残っているので、未来から来た者として「もうじき、何年にこういう出来事が起きる」という前提に基づいて判断をすることもできます。

逆にそれによりタイムトラベラーとして「自分が歴史を変えてしまっていいのか」と苦悩することもありますし、いっぽうで重要な決断において未来を知るものとしてのアドバンテージを発揮することもあり、それが読者にとってのカタルシスともなる場面もあります。ここまではタイムスリップものの作品にしばしばみられる設定です。

ですがそうしたよくある設定に加えて、ケンは自身の個人的なことに関してはすべての記憶を失っているという設定もあります。したがって物語の大きな流れの一つとして主人公ケンの過去も少しづつ明らかになっていくという謎解き要素も含まれているという構成になっているのです。

「歴史グルメ漫画」か「グルメ歴史漫画」か

私の感想としては「信長のシェフ」は「グルメ歴史漫画」の印象が強いです。この作品における食材や料理の描写はどちらかというと簡潔で、大ゴマを使ってババーンと料理を登場させたり、ページ数をふんだんに使って料理を解説するタイプの演出ではありません。グルメ要素を前面に押し出した作品というよりも、戦国時代を舞台にした人間ドラマという色が濃いと感じます。

この観点からこの作品の真逆、つまり「歴史グルメ漫画」であると私が感じるのは「中華一番」で、こちらは19世紀の中国を舞台にしていながら作品の主軸は料理かと思います。

歴史上の人物のキャラ設定は手堅い系

歴史モノを題材に作品化するにあたって難しい点でもあり、また読者からすると見どころでもあるのは、歴史上の人物というのは読む人の中でその人物のイメージがある程度固定化されており、それをどのように裏切らずにかつ作者の個性を込めて生き生きと描くのかが問われるということがあります。

多くの日本人に人気のある歴史上の人物について、たいてい義務教育の段階から学びますから、そのイメージは年月を重ねた強固なものです。

これまでさんざん描かれてきたキャラ設定を堅実にそのままなぞるのもいいですが、下手をすると「またか」と思われてしまいますし、また逆に変に冒険をして従来のイメージの真逆を張るようなキャラにしてしまうと反発を買うおそれもあり作品としてコケたときの批判は堅実派よりも厳しいものになりがちです。

そうした観点からすると「信長のシェフ」は堅実に手堅いキャラ作りをしていると感じます。みんな大好き信長は天下統一のすでにその先を見ており、多くの人には理解しがたくときに傲慢で畏怖される存在でもある。

これまたみんな大好きな秀吉は人当たりがよく主君から可愛がられて出世するタイプ、と多くの人が思い描く人物像から逸脱しません。安定重視のキャラ設定ですね。

主戦場に戦国グルメ漫画という新しいジャンルを選ぶという時点で冒険なわけで、これは手堅い選択と感じます。

グルメ漫画としての「信長のシェフ」 – 飯テロ性は?

グルメ要素よりも人間ドラマが濃厚な作品と先ほど説明しましたが、それでも「信長のシェフ」の主人公は料理人であり、料理の腕をもって様々な困難を打開して活路を切り開いていくという筋書きですので、この作品もグルメ漫画・料理漫画とジャンル分けしていいと思います。

ちなみに私はグルメ漫画は自分の中で2つに大別していまして、一つは読んでいてお腹がすきまくるもの、いわゆる飯テロ漫画、もう一つは読んでもお腹がすかないものです。

これは優劣や好き嫌いではなくあくまで分類ということです。要は寝る前やダイエット中には触れられない作品かそうでないかということですね(笑)。

以下は完全に私の主観ですが、もう読んでいるとどんどんお腹が空いてくるグルメ漫画作品のリストです。

  • 「山と食欲と私」
  • 「深夜食堂」
  • 「侠飯」

いっぽうで、これまた私の主観ですがお腹がすかない作品のリストです。

  • 「バンビ〜ノ!」
  • 「信長のシェフ」(今回の作品)
  • 「中華一番」

ちなみにグルメ漫画の金字塔かつパイオニアの「美味しんぼ」は私的にはこの分類の中間くらいの位置づけです。

最後まで私の主観ですが、おそらく私が食欲を掻き立てられる作品は「身近にある食材/料理」が描かれているかどうか、その手ごろさなのかと想像します。「信長のシェフ」は舞台が戦国時代であるため現代の日本に生きる日本人の私からするとなじみのない食材(鶴、山鳥、猪など)も多く、コンビニですぐ入手して食べられるようなものが少ないのが理由なのだろうと推察します。

歴史に詳しくない/興味がなくても楽しめる?

歴史に興味があるほうがより楽しめるのは間違いないでしょう。歴史といっても学校の勉強のような難しいものである必要はまったくなく、「誰と誰が仲が悪かった」などの因縁だけでも知っておくと面白さ120%です。

あとは歴史モノの楽しみ方の一つだと私が勝手に考えている「この作品ではあの人物をどんなキャラで描くのか?」という観点から見るうえでも予備知識があると作品の魅力が倍化すると思います。

具体的には、大河ドラマではあの俳優が演じていたとか、あのアニメではヘタレキャラとして描かれていた、といった前知識があるとより楽しめる作品であると思います。

おわりに

以上、漫画の「信長のシェフ」の感想をまとめました。
最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。

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