山本英夫「ホムンクルス」ネタバレなし漫画感想

Homunculus 漫画

今回の記事は漫画レビュー。山本英夫さんの「ホムンクルス」を取り上げます。
私にとって山本英夫さんの代表作といえばなんといっても、変態を悲哀と悲劇にまで昇華させたともいえる「殺し屋1」ですね。

さて今回紹介する作品「ホムンクルス」ですが、この作品は一言でいうと、メンタルサイキック、人間ドラマ、社会派ドラマ、という感じです。一言じゃなかったですね(笑)。

アクションやバイオレンスの要素が強く、ヤクザ漫画の一種とカテゴライズされることも少なくない「殺し屋1」とはベクトルがかなり異なる、人間の心の深層・闇に迫る作品です。

とても面白い作品なのですが、今まで映像化はされていません。おそらく技術上の問題もあるのかな?と映像の素人なりに邪推してしまうのですが、CGをフルに使った「ホムンクルス」を見てみたい気もします。

あらすじ

エリート金融マンからホームレスになった男、名越。彼は新宿の公園を拠点にホームレス生活を始める。華やかだったころの暮らしを忘れられないためか、公園にテントを張ることもなく路上に停めた車の中で寝泊まりする生活を続ける名越。一流ホテルとホームレスが集まる公園との境目にある路上で。

そんな名越の前に医学生を名乗る青年、伊藤が現れる。彼は名越にちょっとした医学実験の被験者となるよう持ち掛け、報酬として70万円を提示する。
伊藤の医学実験とは、頭蓋骨に穴をあけることによって第六感を目覚めさせる、トレパネーションというものであった。

不審に思い一度は断った名越だが、愛車がレッカー移動されてしまい背に腹は代えられずトレパネーションの被験者となる。
そして頭蓋骨に穴をあけた後から名越の目に不思議な世界が映り始める。

みどころ

他人のトラウマなど心の問題が形となって見えるようになる

頭蓋骨に穴をあける施術、トレパネーションを受けてから、名越の目には他人を左目で観た時だけ、その人たちが異形の者たちとして映るようになります。

たとえば街でからんできたヤクザを左目だけで見ると、胴体がロボットアニメのロボットになっている。右手にはなぜか血の付いたカマを持っている・・
なんだこれは・・?という謎解き要素なわけです。

それら異形の者たちがなぜそのような形をとるのかについてはすべて意味があり、それはその人が抱えるトラウマや心の闇の部分が具象化されたものであることがだんだんわかっていきます。

破滅へとゆるやかに沈みながらも、癒し手でもある名越

序盤のエピソードの一つに名越とある女子高生との邂逅があります。この女子高生は今どきに言うと毒親の影響で心に問題を抱えているんですが、それは砂の形をとって名越には見えます。
名越がこの女子高生とどうかかわり、彼女の心の問題を明らかにしていくのかが前半の山場となっています。

そして重要なキャラクターの一人である伊藤ですが、彼もまた心に問題を抱えています。彼は裕福な医師の家庭に育ちながらも鼻やあご、耳などいろんな個所にピアスをつけていて髪も金髪という奇抜ないで立ちで登場しますが、そこにも彼が心に抱える問題が潜んでいるというわけです。その闇についても名越は切り込んでいき、そして結果として癒し、本来の生き方へと導くことになります。

人格障害、メンタルヘルス、臨床心理学、カウンセリング、毒親

こんなワードに興味を惹かれる方にはこの作品はとても面白いと感じられるかと思います。
私も少しだけそうした分野の勉強をしたことがあるので、思わずニヤリというか「ああ~わかるわかる」と納得させられてしまう描写がときおり出てきます。

だんだん壊れていく名越

物語りの進行につれ名越はだんだん壊れていきます。この作品は超能力らしきものを手にした主人公が困っている人々を助けていくヒーロードラマという単純な作品ではありません。

信頼できない語り手、名越

名越はかつてエリート金融マンで、かなり羽振りの良い暮らしをしていたことが彼自身の回想として描かれます。ただしそれは名越の回想の中だけなのです。作中に彼の過去を知る人物というのは登場せず※、彼と他者とのつながりは現在進行形でしか描かれません。(※実は登場するのですがあまり書くとネタバレになるのでご勘弁を)

さらにだんだんと名越が虚言癖の持ち主であることも描かれてきて、読者としては「お前、本当にそんな輝かしい経歴の持ち主なの?」と疑念がわいてくるわけです。主人公ないしは語り手に疑わしさを持たせるプロットですので、名越もいわゆる「信頼できない語り手」だといっていいのではないかと思います。

信頼できない語り手の元祖はアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」だと聞いたことがありますが、読み進めていくうちに「こいつ(語り手)ウソついてないかい?」と疑念がわいてくる面白さですね。

余談ですがこういう楽しさは映像作品ではなかなか表現が難しく、俳優の力量や適性も影響するため、やはり小説や漫画などの紙媒体の特権だと感じます。

少し話がそれましたが、主人公である名越の過去が少しづつ明らかになっていくのも作品の大きな見どころの一つですね。

「ホムンクルス」が気に入った人にはこういう作品もオススメ

映画「ヴィデオドローム (1982)」:デヴィッド・クローネンバーグ監督

不思議な能力を手に入れた主人公が人生を狂わせ壊れていくというプロットには共通性を感じました。あと同じ監督の「スキャナーズ (1981)」はサイキックサスペンスという趣の作品ですがこちらもオススメです。

漫画からオススメも紹介したかったのですが、ちょっと探せませんでしたので、見つかりましたらまた追記したいと思います。スミマセン(;^ω^)

おわりに

以上、今回は山本英夫さんの漫画「ホムンクルス」についてのレビューでした。
最後まで読んでいただいてどうもありがとうございました。

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